近年、建築パースの制作においては、手書きではなくCG(コンピュータグラフィックス)を用いた「建築CGパース」が一般的になっています。
CGを用いることで、よりリアルで具体的な建築物や空間イメージを表現することが可能になりました。
本記事では、建築CGパースの制作プロセスの中でも特に重要な「モデリング」に焦点を当て、その詳細について解説していきます。
1. モデリングとは?
建築CGパースにおいてのモデリングは、仮想的な空間や建物をコンピュータ上で立体的に構築するプロセスです。
手書きのパース制作における建物や環境の描写に相当し、CG技術を用いてより詳細かつ現実的な表現を可能にします。
データ収集と構想設計
モデリングの初めには、建築物やその周辺環境に関するデータを収集することが重要です。
建築のプランや設計図、写真などを取得し、これを基に構想を設計します。
データの正確性や適切な構想が、後のモデリング作業において重要な要素です。
3Dモデリングソフトの利用
構想が明確になれば、専用の3Dモデリングソフトを使用して建物や環境をモデリングします。
建物の形状、窓やドアの配置、屋根の傾斜などを精密に設計できます。
3Dモデリングソフトには様々な種類があり、建物の特性や制作の目的に応じて適切なソフトを選ぶことが重要です。
テクスチャリング
モデリングが進んだら、建物に実際の材質や質感を与えるためにテクスチャリングが行われます。
テクスチャは、木材やコンクリートなどの表面の質感を再現するための画像やパターンです。
建物がより現実的で魅力的な外観を持つようになります。
照明設定
モデリングが完了したら、建物や環境に合わせて照明を設定します。
照明の配置や光の強さ、影の位置などを慎重に調整することで、CGパースに立体感や奥行きを与え、リアルな印象を生み出します。
照明設定は建物の特徴を引き立て、表現力を向上させるポイントです。
プレビューと修正
モデリングが進むにつれ、プレビューを行いながら修正を加えることが重要です。
モデリングソフトにおいては、リアルタイムで変更を確認できるため、デザインや表現に細かい調整を施すことが可能です。
プレビューと修正を重ねながら、理想に近いCGパースを完成させることが目標です。
このように、モデリングは建築CGパースの制作において基本的かつ重要なステップです。
データ収集からスタートし、専用のモデリングソフトを駆使して建物や環境を詳細に設計し、テクスチャリングや照明設定によってリアルな印象を生み出します。
モデリングの段階で注意深く作業を行うことで、クオリティの高い建築CGパースを実現できます。
2. 2Dと3Dの違い
手書きパースが通常2Dであるのに対し、建築CGパースでは3Dモデリングが主流となっています。
3Dモデリングは、建築CGパースにおける表現の幅を大きく広げ、よりリアルで具体的な視覚表現を可能にしました。
2Dは平面的な描写を主体とした手法であり、建物や景観を水平方向と垂直方向の二次元の平面上に描き出します。
手書きパースでは主に線やシェードなどを駆使して奥行きや形状を表現します。
一方で、3Dは三次元の空間を利用し、物体が奥行きを持って立体的に描かれます。
建築CGパースにおいては、3Dモデリングを用いることで以下のような違いが顕著になります。
立体感と視点の変更
3Dモデリングにより、建物や景観の立体感がより自然に表現できます。
また、視点を変更することで建物の各面や角度を詳細に確認できます。
臨場感の向上
2Dでは難しかった建物の周囲の空間や景観を、3Dモデリングによってより詳細かつリアルに再現できます。
建物が存在する環境全体のイメージを鮮明に伝えることができます。
質感の詳細な表現
3Dではテクスチャリングや光の設定により、建材や質感のリアルな表現が可能です。
木や石、金属などの質感を忠実に再現することで、建築物の外観がより生き生きとした印象を与えます。
デザインの柔軟性
3Dモデリングでは柔軟にデザインの変更や調整が可能です。
建物のデザインを細部まで緻密に計画し、変更が必要な場合でも迅速に対応できます。
このような2Dと3Dの違いにより、建築CGパースはより現実的で詳細な視覚表現を可能にし、建物や環境のプロジェクションにおいて高い表現力を発揮しています。
3. モデリング作業工程
モデリング作業は、建築CGパースの制作において中心的なプロセスであり、慎重かつ詳細な作業が求められます。以下は、モデリング作業工程の主要なステップと、それに使用される代表的な3Dモデリングソフトの例です。
STEP 1 データ収集と構想設計
最初のステップでは、建築物や環境に関するデータを集め、その基づいて構想を設計します。
使用ソフト
・AutoCAD: 建物のプランや設計図を作成するのに適しています。2Dおよび3Dの設計に対応しており、データの正確な取得が可能です。
STEP 2 3Dモデリングソフトの利用
構想が決まったら、専用の3Dモデリングソフトを使用して建物や環境を具体的にモデリングします。
使用ソフト
・Blender: 無償で利用可能な強力な3Dモデリングソフト。高度な機能を備え、建物だけでなく景観やキャラクターのモデリングにも利用されます。
・SketchUp: 直感的なインターフェースと迅速なモデリング機能が特徴です。建物の外観や形状を素早く設計できます。
・Rhino: 曲線や曲面のモデリングに強みを持ち、複雑な形状のデザインに適しています。
STEP 3 テクスチャリング
モデリングが進むと、建物に実際の材質や質感を付与するためにテクスチャリングが行われます。
使用ソフト
・Adobe Photoshop: テクスチャ画像を編集し、建物に適した質感を作成するのに利用されます。
・Substance Painter: リアルな質感やディテールを追加するための専門的なテクスチャリングツール。
STEP 4 照明設定
建物や環境に合わせて照明を設定することで、CGパースに深みや陰影を与えます。
使用ソフト
・Lumion: リアルタイムでのプレビューが可能な照明設定が得意なソフト。効果的なアウトプットを得るのに役立ちます。
・V-Ray: リアルな光の挙動を再現し、建物に自然な光と影を与えるためのレンダリングエンジン。
STEP 5 プレビューと修正
モデリング作業が進むにつれ、プレビューを行いながら修正を加えることが重要です。ソフトウェアが提供するリアルタイムなプレビュー機能を活かし、デザインや表現に細かい調整を施します。
プロジェクトの性質やデザインの要求に応じて、最適なツールを組み合わせて利用することで、高品質でクリエイティブな建築CGパースを制作できます。
4. まとめ
モデリングは建築CGパース制作において欠かせないプロセスであり、建物や景観の詳細な表現に影響を与えます。
手書きパースとは異なり、CGパースでは3Dモデリングを駆使して建築物のリアルな姿を表現します。
適切なデータ収集から始まり、3Dモデリングソフトを用いた建物の形状設計、テクスチャリング、照明設定などを通して、クオリティの高い建築CGパースを制作することが求められます。
建築CGパース制作においては、モデリングの段階からプロジェクトのイメージを具体化し、クライアントに魅力的かつ正確に伝えることができます。